2013年4月2日火曜日

中嶋洋一著『学習集団をエンパワーする30の技』

前々から少しずつ読み進めていた本で(本来であれば研究のために論文とか読まないといけないんだろうけど現実逃避的に一気に読み進めたのは秘密)、ようやく読み終えることができたので、考えたことなどを残しておきたいと思います。主に私自身への戒めとしてですが。


①環境の重要性
大学の教科教育学の授業では、例えば指導法であるとか第二言語習得論(SLA)であるとか「教科」に関することを多く学びます。しかしながら、その指導法やSLAの知識が効果を発揮する基盤となる「学習環境」の整備の大部分を学ばずに学部を卒業したなぁというのが個人的な反省です。小学校の先生からよく聞く「学級づくり」あるいは「クラスづくり」という言葉は、中等教育に上がるとあまり聞かれなくなるような印象です。学級担任制と教科担任制の違いから生じるのかもしれませんが、「教科指導」と「学級づくり」の比重を今一度考えてみる必要があると思います。

楽しく学ぶためには、互いに間違いを許し合う、違いを認め合うようなcomfortableな環境でなくてはいけない。そして、わからないことをそのままにするのではなく、その場ですぐ解決できるうようなシステムを作っておくことが大切だ。 (p. 18)  

授業中に手を挙げて発表させる、自己表現させる前に、「自分が発言しても安全である」という状況を保障しておかなければ、学習者は発表したがらないし、表現したがらないでしょう。この集団は自分を受け入れてくれる、間違っても大丈夫、傷ついたりはしないというラポールが形成されることが、自らをさらけ出す前提条件であることを認識したいです。

また、教師の言葉の使い方ひとつで学習者の行動が変容することは容易に想像ができる。しかし、それを踏まえて実際にどのような声掛けをするか、ここまでなかなか手が回らないかもしれません。ただ褒める、というのは学習者はすぐ見抜くでしょう。実際自分がそうでしたし。具体的に何が良かったのか、という言葉を添えることでこのことは解消することができるのでしょう。言葉の教育をする以上、自身が用いる言葉は意識しておきたいです。



②銀行型教育概念からの脱却
「銀行型教育概念(Freire (1970) The Banking Concept of Education)」という考え方があります。中嶋先生は次のように説明しています。

教師が教材を提示し、生徒に説明する。生徒は覚える。これは銀行型(積み立て預金のような)勉強法である。覚えておけば、いつか使えるようになるだろうという発想だ。一方で、自動車学校型の勉強法がある。基礎・基本を徹底して、その後自分でドライビングしながら学んでいくというものだ。(p.158)

銀行型教育概念はいわゆる詰め込み教育に似ている概念と言えるかもしれない。とかく教師は説明したがる性分が強い気がする(私自身がそうである)。説明は短く簡潔にまとめる技術というものが教師には必須だろう。そこから学習者が「あ、そうか!」と気づく場面を仕掛けるのが教師の役割であると認識を改めたいですね。

FreireのThe Banking Concept of Education柳瀬先生のブログエントリーでまとめられています。興味のある方は是非。



③学習者の自己肯定感の醸成
最後に、中嶋先生は一貫して「学習者が気づく」「できたと実感できる」ことが成長するトリガーになることを記されていたように思います。自己肯定感(self-esteem)を高めることが成長を促し、また①の環境づくりに大きくフィードバックを与えるものになるでしょう。正答を求めるのではなく何を学び取ったのかを求める、間違いをさせない指導から間違いから学ぶ指導へ。その環境の中で学習者が「分かった!」「できた!」という感覚を得られるようなアクティビティを設定することが大切です。


…とつらつら書いてみたものの、私にとって本当に耳が痛いことばかりでした。特に塾での行使経験を振り返ってみるともう…!これからしっかりと意識していきたいです。



春休みの課題図書にしていた本があと2冊残っている…何をしていたんだ自分(笑)



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Amazon 中嶋洋一. 2000. 『学習集団をエンパワーする30の技―subjectからprojectへ』

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