2013年3月10日日曜日

田尻悟郎先生の英語ワークショップin福岡

2013年3月9日(土)、福岡の天神ビルで行われた、『田尻悟郎の英語ワークショップin福岡』(正進社主催)に参加してきました。とても貴重なお話をたくさんしてくださいました。田尻先生のお話と、それに関連して私が考えたことを(差し障りのない程度に)まとめておきたいと思います。



①事前の生徒指導=人間関係の形成

一般的に、生徒指導には消極的生徒指導と積極的生徒指導の2つに大別することができますが、その2つの基盤になるのが生徒と教師の「人間関係の形成」であり、ここから全てが始まります。生徒にとって「良い先生」とは、話を聞いてくれるしダメなところは指摘してくれる先生だそうです。田尻先生は、生徒からの信頼を得るには生徒たちが「自分たちのために何か一生懸命してくれている」と感じることがスタート時点であるとおっしゃっていました。

このお話を聞いて、私自身の学生生活を振り返ってみると、確かに自分にとっていい先生とは、自分のために親身になって動いてくれていると感じられる先生であったなぁと思います。

力で押さえつけたり、怒鳴ったりすることは、その重石がなくなった途端、それまで押さえつけられていたものが噴出していくだけであり、何の教育にもなっていないでしょう。自分で律する力をつけずに教師が“コントロール”しているだけに過ぎないと、先生ご自身の経験を交えてお話をいただきました。


②授業は生徒指導の場

①を踏まえると、授業は生徒指導の場であると捉えることができます。授業中には、生徒とコミュニケーションを取る場面がたくさんあります。そのコミュニケーションの中で、ある生徒が乱雑に扱われたり、コミュニケーションが先延ばしにされると、その生徒の信頼を得ることができるでしょうか。普段のコミュニケーションでは当たり前にできていることが、授業の全体指導になるとなかなか難しいと感じます。しかし、そうした小さな積み重ねが、生徒の信頼を得る最短かつ唯一の方法であると思います。どうしてもコミュニケーションを先延ばしにするほかないという場合でも、言葉一つで信頼は維持することができるのだと思います。


③習熟度別とは

近年、習熟度別クラスが多く導入されていますが、果たして習熟度別にクラスを分ける必要があるのでしょうか。習熟度別に分けたところで、その中でまたfast-learnersとslow-learnersの二項対立が生じるのは必至ではないでしょうか。考え方は、どうしても生じてしまう生徒の個人差をどのように活かすかであると思います。習熟度別に分けられていない、一般的なクラスでは、どうしてもslow-learnersに目が向きがちで、fast-learnersがないがしろにされがちです。「fast-learnersは何も言わなくても進んで課題をするから放っておいても大丈夫」というのは良く聞く言葉です。しかしこれは、ある意味で、fast-learnersのケアを怠ることへの正当化のようにも感じられます。fast-learnersをケアしつつ、fast-learnerがslow-learnerをサポートする環境を整えることで、slow-learnerがfast-learnerから、またfast-learnerがslow-learnerから学ぶこともあります。(このような考え方に至るには、まず授業は教師が生徒に知識を与えることであるという考えから脱却する必要がありますが…。)また、クラスの中で習熟度別課題を与えて、自分の力に応じて課題を遂行していき、上記のような環境を整えることも可能であると思います。


④課題をしてくれば授業についていける仕組み

これは、私が今回のワークショップの中で一番印象に残っているところです。学校での学習と家庭学習、どちらも大切な学習の側面です。田尻先生からの問いかけは、「家庭学習が、生徒にとってやりがいのある、力が付くと実感できる課題になっていますか」でした。また、その返却の仕方について、「スタンプやサインだけで済ませていませんか」という問いかけもありました。生徒が「よし、課題をやってこよう!」と思える瞬間は、自分のやってきた課題に対して教師が一生懸命見てくれたということを実感できた瞬間課題をやってきたから授業についてくことができたと実感できた瞬間です。これこそ、生徒の信頼を得るための第一歩であり、生徒が生徒が授業に積極的に授業参加するための環境づくりであると思います。

例えば、音読にもいくつか段階があります。(1)正しく読む段階、(2)たくさん練習する段階、(3)成果を確かめてもらう段階の3つです。これらの中で(1)と(3)は学校でしかできないものです。となると、(2)を家庭でやってくることが考えられます。(2)を家庭で練習してきて、それを学校で(3)成果を確かめる。そうすると、(2)を一生懸命してくるようになるのだそうです。

これもまた、生徒一人一人が(1)の段階でできるようになっているか確認することにより「自分のことをきちんと見てくれているんだ」と生徒が実感する大切な場面になります。




こうして考えてみると、やはり授業は生徒と教師の「人間関係の形成」の場であり、それをないがしろにするということは授業放棄していることと同義であると感じます。となれば、生徒の情意的な側面を考慮することも、授業準備の段階で必要であると思います。どの場面でどのような声掛けをするか、また、どの時期にどのような活動を取り入れるか、目の前の生徒をしっかりと見て考えることが(当然ですが)大切です。

と抽象的な一般論のようになってしまいましたが、具体的な授業の活動に落とし込んで考えていきたいと思います。